<前回の記事>
- 千葉(PO準決勝・ホーム大宮戦、4-3)
- 徳島(PO準決勝・ホーム磐田戦、1-1)
<千葉スタメン> ※()内は前試合のスタメン
- 最終節(今治戦、5-0)で負傷交代した椿直起が復帰しベンチ入り。

<徳島スタメン>

長かった今シーズンも、最後の試合であるPO決勝。
それが(全国放送も行われるため)一年を象徴するものとなり、かつ既に決まった自動昇格クラブをも凌駕する注目度に達するのもある意味当然の流れと化し。
2年前のヴェルディもそうでしたが、それが10何年ぶりの昇格・名門復活と釘撃たれれば、多少の理不尽さを感じながらも我々は受け入れる他無い、といった一戦となったでしょうか。
この日も徳島・増田功作監督へのインタビューが準決勝同様、コンクリート壁を背にして行われるという具合に、完全アウェイ感を醸し出す千葉のホーム・フクダ電子アリーナ。
そして説明不要の如くスタンドは埋め尽くされ、逆にキャパシティの限界が心配された程であり。
それでもヴェルディのように国立競技場での開催を選ばなかったのは、満席が織り成す臨場感による後押しが何より重要と感じての事か。そう考えれば、あの時のヴェルディはよく国立をあれだけ緑へと染めたものであり
ともかく、待ち望まれるJ1復帰の舞台を整えたうえでこの日を迎えた千葉。
ほぼ全面の千葉へのサポートという環境下で、勝利を掴む事が求められる徳島。
その入りならびに前半の戦いぶりは一重に慎重、と言ったもので、守備時では前線は規制を掛けつつもブロックを整える事が何より第一という姿勢。
そして攻撃時も無理な押し上げはせず、前線にボールが収まらなかったら直ぐに切り替え、カウンターの隙を作らないような立ち回りが優先されました。
その徳島のシステム面は周知の通り、3バックと4バックの使い分け。
それは相手の布陣によるウェイトが大きく、4-4-2が基本である千葉に対しては、守備時に青木駿人がサイドバック・高木友也がサイドハーフと化しての4-4-2への可変。
そして攻撃時に、3バックのまま地上でパスを繋ぎポゼッションを高めていくというものが基本戦術となり。
その保持の面も、ガチガチのパスサッカーという空気は既に薄れ。
エウシーニョのキープ力を頼みとしながら、相手のハイプレスを受けるやターゲット狙いへと切り替えロングボールを送り。
そうした手駒をフルに活かしながら、相手の立ち回りを見ての行動で上回れるかどうかがカギとなりました。
前半5分に千葉の攻撃を切ったのち、エウシーニョがボールキープで即時奪回を狙った千葉ディフェンスを逸らしたうえで、改めて最後方から繋ぎ直し。
それでも無理に奥へ切り込む事無く、右手前からの(エウシーニョの)クロスと遠目からトニー・アンデルソンを狙い、これを収めたアンデルソンがエリア内右奥からシュート。(GK若原智哉キャッチ)
1点が必須という空気に負ける事無く、90分間粘り強く戦う意思表示のようなファーストフィニッシュでした。
こうなると準決勝に象徴されるように、常時ハイテンションで戦う傾向のある千葉は気の抜けた戦いを強いられ。
その結果何処かで失点してしまい星を落とす、といった危惧が膨らみますが、この日は愚直な戦いはせず対応力を発揮しに掛かり。
7分のビルドアップで田口泰士がセンターバックの左へと降りて持ち、それによりSBの日高大を上げるという立ち回りを見せたのがその号砲。
これにより、徳島も素直な4-4-2のままの体勢を取る訳にもいかず。
以降そんな崩しを図るべく、最終ラインは高橋壱晟が残っての3枚という体制が常態となります。
そして日高が前に出る事で、徳島が頭を悩ませるのが、右SHと化してそれに対処するルーカス・バルセロス。
4-4-2を崩さない位置から、日高にパスが付けられる(ないしは出されそうになる)と下がって対処する守備姿勢。
その上下動は守備に奔走されるという絵図がピッタリで、かつ(彼のみならず全体が)ボールゲインを狙うものでも無いため、カウンターの起点となれず時間を潰す事となり。
大半が河野貴志→日高へのパスの流れに対し、適度な距離をもって下がりながら対応するというものに終始したその姿で、バルセロスのストロングポイントは消される格好となりました。
そんな睨み合いでの攻防で優位に立った千葉は、10分に徳島の攻めを断ち切ったのち、クリアボールに対するバルセロスのトラップが逆方向へ流れるミスによりカウンターに。
中央をカルリーニョス・ジュニオが持ち運び、一直線と見せかけて右へ展開ののち、杉山直宏が右からカットインシュートを放つも山田奈央のブロックに阻まれ。
この一撃により、逆に徳島がカウンターのケアに難儀する事となり以降攻撃は及び腰に。
ボール保持も冴え渡らなくなり、アンデルソン狙いのロングボールや、プレッシャーを掛けられた状態での無理矢理な縦パスを送る他無くなり。
結果20分以降、千葉が攻撃権を独占する状態となりました。
こうして優位な時間帯が訪れた千葉、20分に右からの田口の縦パスを起点として中央での崩し。
今治戦でも発揮したショートパスの連続から、チャンスエリアで受けたカルリーニョスが反転しながらミドルシュートを放ちましたがGK田中颯のセーブに阻まれ。
しかしフィニッシュとしてはこの場面ぐらいと、良い流れの中で決められないという展開で不安を残す結果に。
当然引き分けOKな立場ですがそれを意識するには早過ぎ、局面が変わる前にリードを得たい所なのは言うに及ばず。
防戦が続いた徳島は、30分に縦パスをカットしたエウシーニョからカウンターに持ち込み、アンデルソンの縦パスを受けたバルセロスが右手前からクロス。
ファーで渡大生がフリーとなるも僅かに合わず、その後も保持を続けた末にエウシーニョがミドルシュート。(GK若原キャッチ)
何とかフィニッシュに繋げる事で、千葉の流れを断ち切りに掛かり。
その後も徳島のビルドアップは不純な流れで、それを突くべくボールゲインから攻め立てる千葉ですがフィニッシュには辿り着けず。
スコアレスから動く気配は今の所無い……となれば、脅威となり得るのがセットプレー。
41分に(アンデルソンの反則で)左ワイドからのフリーキックを得た千葉ですが、その位置は中盤付近とかなり距離があり。
そこで放り込みの体勢を取ったうえでキッカー田口は同サイドへの縦パスと変化を付け、イサカ・ゼインのレイオフを経て、距離を近くしたうえで改めてクロスを送った田口。
その跳ね返りを杉山がミドルシュートに持ち込みましたが、惜しくもゴール上へと外れ。
絡め手も交え、フィニッシュを生み出しましたが決まる事は無く。
一方徳島も45分に左スローインで高木のロングスロー、という体勢を作ったのち短く投げ入れる高木と変化。
そして鹿沼直生がラフに上げたクロスを、渡落とし→エウシーニョシュートと繋げ、ブロックされるも尚も右CKと数珠繋ぎになるセットプレー。
ここでもキッカー高木のクロスをニアで渡がフリックしますが、流れる手前でクリアする千葉ディフェンスと必死の攻防に。
このセットプレーが遠因か終盤に乱戦の様相となり、アディショナルタイムに徳島が好機を迎え、裏へのミドルパスを左サイドで受けたバルセロスが奥へ切り込んでクロス。
合わずに掻き出されるも、エドゥアルドが拾った所を奪い返した渡により、再度エリア内に持ち込まれた末に(渡が)シュート。
これをブロックしたのはイサカと、千葉サイドも押し込まれた際はアタッカー全員守備に回る傾向が強かったこの日。
お互い昇格に賭ける執念を見せ付けながらも、動かないスコアという展開で前半を終えます。
千葉サポーターはこの日も、後半開始直前にアメイジンググレイスのチャントを響かせ。
そして今一度コレオでスタンドを埋め尽くすなど、全力で戦いへと没入させる体制で後半戦へ。
その立ち上がりは、そんな逆境を跳ね返す側である徳島のペースに。
アンデルソンをワイドに張り出させたうえでボールを届け、奥を突く回数を増やしに掛かりましたがその成果は今一つであり。
しかし守る方はワンミスも許されない立場であり、その危機が後半5分に訪れ。
青木駿が左ワイドから対角線にロングパスを送り、バルセロスの裏抜けを狙った所、カットに入った日高がGKへと戻すべくのヘッド。
これが若干短くなるあわやというボールになり、眼前に走り込むバルセロスを目にしながらも、何とかボールを抑えたGK若原。
キャッチ優先では無く、先んじて触れる事でバルセロスを空振りさせ、それから抑えるという冷静な判断力に基づいたプレーにより危機は免れました。
緊張感が硬さへと変わりつつあってか、ここまで際立ったフィニッシュは見られず、3分のエウシーニョのミドルシュートもそれに従うようにミートせず不発に。
そんな流れで迎えた6分、その硬さによってか、中盤で起こった田口と渡の交錯(渡の反則)により両者倒れ込む事態が起きてしまい。
田口は無事に起き上がるも、渡の方は起き上がれずそのまま続行不可能に陥る事に。
出動した担架に対し、自力で起き上がりピッチを後にする事を選んだのがせめてもの抵抗だったでしょうか。
ここでローレンス・デイビッドを彼に代えて投入します。
それでも、脅威のスピードを誇るデイビッドの存在のみで、千葉サイドは彼のケアに苛まれる状況となるのは自明の理であり。(準決勝で投入されなかったのは、磐田があまりにリトリートに徹するためスペースが無かったためだろう)
早速の11分、高木のスルーパスを受けて左奥へと切り込むデイビッド。(ディフェンスに遭うもCKに)
そして彼への注意により、他に対して散漫となる危機が。
14分ロングボールをカルリーニョスが落とすも、石川大地と田口の双方が受けられず流れたボールを高木が回収、これによりスペースを得た状態で徳島の攻撃に。
高木からパスを受けたバルセロスが溜めを作り、エリア内へ送った浮き球に走り込んでボレーシュートを放ったのはアンデルソン。
ザ・決定機といった絵面でしたが、鋭くゴールへ向かったボールはバーを直撃して跳ね返り、先制点を生み出す事はありませんでした。
方や半分ミスでの形だっただけに、千葉サイドは安堵のため息に包まれ。
この時間帯は徳島の独壇場という感じで、次々と攻撃機会を作り。
地上での繋ぎは前半と同じく今一つも、ロングパス・ミドルパスの選択肢を増やした事が流動性に繋がり。
デイビッドの裏抜けや、アンデルソンの手前のバルセロスを狙った浮き球など、多彩なボールがビルドアップ成功を齎します。
他方、押され続ける千葉。
ゴールを許さない事を続けるのみでミッションは達成される立場ですが、こうも攻められ続けては失点の可能性を高めるのみなのは明らかであり。
イサカを軸としたサイドの突破力も、前半に比べ守備に追われるため発揮し辛い状況に。
相手ウイングバックに対しSHが下がってケアをする体制に固定化され、必然的に全体引き気味という印象が植え付けられてしまいます。
そしてベンチが動いたのが21分で、そのSHが早速弄られ、準決勝のヒーローとなった姫野誠を投入します。
杉山と交代した事で、イサカが彼の居た右へと回り。
若干17歳である姫野の力で展開を変えに掛かる、と書けば聞こえは良いですが、その直後の21分。
早速姫野が左からクロスを入れる状況に持ち込んだ千葉でしたが、それがブロックされるとデイビッドが拾った事でカウンターの逆起点になってしまい。
そしてスルーパスを受けたバルセロスがエリア内左へ持ち運び、入れられたグラウンダーのクロスが再度アンデルソンの足下へ。
しかし再び放たれた決定的なフィニッシュも、ふかしてしまい決められず終わります。
徳島は決定機も生み出しながら、後半も半分が経過。
このまま優勢な時間を得点で締めたい所でしたが、それにより知らず知らずに前掛かりとなってしまっていたでしょうか。
迎えた24分、千葉の自陣からの左スローインという局面で、徳島は即時奪回を狙うべく圧縮させて構えに入り。
しかし受け取った石川はそれを巧みにかわした末にサイドチェンジ、デイビッドがカットに入るもかすったのみで、逆サイドの高橋に渡り逆に千葉の絶好機に。
サイドで2対1が作られた以上前に出る訳にはいかない高木を他所に、ドリブルで持ち運んだ高橋は悠々アーリークロスを送る(責任を取る形で、ハイスピードで戻るデイビッドが痛々しく)と、中央に入り込んだカルリーニョスがドンピシャのヘディングシュート。
ゴール右へと突き刺さり、思わぬ流れでの「疑似カウンター」を炸裂させる形でついにスコアを動かしました。
当然この1点の意味合いはシーズン中とは比較にならず。
2点が必須となった徳島を窮地に追い込み、かつ千葉の頭上に昇格への梯子を垂らせるものに。
それを存分に活かすべく、千葉が採った策はリトリート。
SHも守備的な位置へと固定させ、ハッキリとリードを守る意識を強めます。
これでスペースを得る事は稀となった徳島、中盤でパスを繋ぐ機会は増えるも、「ボールを持たされる」展開の典型例へと陥る事に。
そして崩しきれないまま、焦れてバックパス→山越の手前からのクロスという絵図が頻発したのも印象を悪くします。
こうなった以上、左右のCBの攻撃参加が欲しい所ですが、その責任から逃れるようなアーリークロスが上がるのみでは如何ともし難く。
そして交代カードに頼る状況が訪れ、33分に一挙3枚替え。
エウシーニョ・高木・児玉→柳澤亘・宮崎純真・岩尾憲へと交代します。
しかしいずれも定例のカードという形で、目新しさも無い以上、守る側にとっては今までの事を続けるのみであり。
ひたすら耐えるのみという千葉ですが、そうした単調なクロス攻勢が続けば楽となり。
SHが戻る事によってクロスの出所を封じ、例え上げられても屈強な中央で跳ね返す。
この繰り返しで徳島のフィニッシュを封じていき、時計を進ませていきます。
それでも引き籠りのみではその消耗も激しく。
緩和すべく36分にベンチが動き、田口・カルリーニョス→品田愛斗・呉屋大翔へと2枚替え。
以降、徳島の最後方での繋ぎに対しひたすらチェイスを見せる呉屋の動きにより、近付く昇格の時へと自ら進む意欲が高まってきたでしょうか。
(徳島は40分、バルセロス→玄理吾へと交代)
そして41分、またも自陣でのスローインからのプレス回避に成功した千葉、右からイサカが持ち運び好機に。
低く入れられたアーリークロスを、呉屋がスルーしたその先には姫野で、この訪れた得点チャンスをボレーシュートで仕留めにいった姫野。
しかしゴール上へ僅かに外れ、決定的な追加点は得られず。
それでも、間違いさえ起こさなければもう問題無いという時間帯に。
最後の交代以降、守備時はイサカが降りての5-4-1へと固定化された事で、(SHが)下がり過ぎとなる問題も一定の解決を見せ。
何とか崩さなければならない徳島。
このままでは埒が明かないとばかりに、左右のCBも前へとベクトルを向け始め。
しかし山越・青木駿ともに自らの持ち運びはあまり期待できないタイプなので、逆サイドでの組み立てに対し、対角線のボールへのターゲットとなる形でボックス内に入る事に努めます。
AT最初の好機はその形で、宮崎が溜めを作ってのクロスに対し中央に跳び込んだ山越でしたが合わせられず。
そして残りはATとなり、千葉は最後の交代を敢行。
イサカ・日高→前貴之・鳥海晃司と、5バックシステムの更なる強化を図り文字通りの逃げ切り体制に。
エリア内へ浮き球を送り続ける事しか出来ない徳島の攻撃を、粘り強く跳ね返し続け。
その果てに、ついにその時が訪れます。
+6分が過ぎた所で試合終了の笛が鳴り。
宿願を達成し、喜びと感動に染め上げられたフクアリのその光景は、最早語るまでも無いでしょう。
即時昇格を狙いながら、16年間過ごす事となった予想外のJ2での思い出も、この瞬間を目にすれば良いものに取って変えられるはずです。
試合後の小林慶行監督のインタビューも、そうした長い辛い思いを象徴するかのようなものに。
果たしてそのJ2での歴史を、新たにJ1で戦うための、身に纏う屈強な防具と出来るのか。
ないしは辛いだけとばかりに投げうってしまうのか。
そんな岐路も同時に迎えたと思われますが、そうした説教臭い事は今は考えるべきではないでしょう。