<前回の記事>
- 磐田(11節・ホーム大分戦、0-3)
- 藤枝(9節・アウェイ千葉戦、2-3)
<磐田スタメン> ※()内は前節のスタメン

<藤枝スタメン>
- 12節(愛媛戦、4-2)で負傷交代した川上エドオジョン智慧は以降ベンチ外が続く。

藤枝がJ2に上がった事で、静岡県の図式は俄然不透明なものに。
とはいっても、主力クラブである清水と磐田の不安定ぶりも一役買っているのですが。
その藤枝の初のJ2シーズンである2023年、運命に導かれるかのように3クラブが揃い踏み。
これまで清水・磐田の対決であった「静岡ダービー」に割って入る事となった藤枝、その名称も「静岡三国決戦」に改められ。
その年藤枝にダブルを付けた磐田がJ1昇格し、1敗した清水が居残りとなったのも、道理といった所でしょうか。
しかし1年でJ2に出戻りとなった磐田に対し、入れ替わるように清水が昇格。
こうして単独で藤枝と相まみえるシーズンになった今季、それに相応しい舞台とするため「蒼藤決戦」と名付けられるに至ったこのカード。
それは本当に盛り上げるためなのか、あるいは清水と違いJ1に定着する力を備えていないが故の自虐(つまり今後何度も藤枝と相対する事を想定)からかは不明ですが、ともかく新たな幕開けを迎えました。
キックオフから早速、最後方での繋ぎに入った磐田ですが、ハイテンションでプレスに来る藤枝をかわせず自陣での右スローインで再開。
すると投げられたボールを角昴志郎が1タッチで裏へロングパスと、前節(札幌戦、4-2)冴え渡ったロングボールの供給へと舵を切り始めます。
しかしダービーマッチに相応しく果敢に球際勝負を挑む藤枝、3分に倍井謙のドリブルを反則気味に松木駿之介が潰し、矢印を反転させ攻め上がり。
右サイドで縦に速い運び、岡澤昴星スルーパス→アンデルソンスルーで、先程ボールゲインした松木が追い越してこれを受け。
さらにアンデルソンを走らせるスルーパスを経て、アンデルソンは角度の無い所からクロス気味にシュートを狙います。(GK三浦龍輝セーブ)
決戦に相応しく、とにかくベクトルをゴールに向けた姿勢を見せ。
しかしそれがいけなかったでしょうか。
本来GKから攻撃をスタートさせる藤枝、この意識が影響したか以降その体勢を取っても全く組み立てる事が出来ず。
磐田もハイプレスを重視するため、その回避がままならないまま送る長いパスにより、簡単にボールを失う状態に。
逆に磐田のパスワークに翻弄され、そして反則も厭わず止めるという、球際勝負の悪い面が出始めるに至ります。
10分には磐田の深めでの左スローインの流れで、レイオフした角に対する(岡澤の)アフターチャージで反則。
これで左奥からのフリーキックになると、キッカー上原力也は角度が薄い所にも拘らず、先程のアンデルソンのように直接ゴールを狙ったキック。
これをGK北村海チディがセーブ、跳ね返りを倍井が頭で合わせたのち収めシュートと追撃しますが枠を捉えられず。
その後も藤枝ディフェンスを揺さぶる磐田、12分に松原后縦パス→倍井スルー→渡邉りょうポストプレイ→上原1タッチでロングパスという流れで裏を取った角。
そのまま左ポケットを突いてカットインからゴールを狙うも、中川創に倒されて撃てず、笛も鳴らずに終わり。
続く13分にも、GK三浦ロングフィード→倍井落とし→渡邉で、一旦こぼれたボールを拾い直しにいった渡邉が中川創と交錯。
これはその後角が拾った事でアドバンテージで流され、右ポケットを取ったジョルディ・クルークスのシュートが放たれ。(GK北村がセーブしコーナーに)
反則が取られないという絵図にも負けずゴールに迫り。
すると17分倍井のレイオフがまたもアフターチャージで久富良輔に倒されると、松原が拾って一旦アドバンテージとなったものの、松原が繋ぐのを止めたため止むに止まれずというように笛が鳴り。
そして久富に警告と、ようやく藤枝に被害が出始めます。
「超攻撃エンターテイメントサッカー」という藤枝のスタイルも、GK中心の最終ラインでの繋ぎからの、疑似カウンターが本質だと個人的に思っています。
一昔前の大分のように、隙を窺って一発の裏へのボールで仕留めるという、工夫が必要ながらも手数の少なさにより手っ取り早く映るその手法。
過去には横山暁之(現千葉)・久保藤次郎(現柏)のような、強力なワイドからのカットインシューターが居ましたが、それ(かつ渡邉や矢村健のようなリアルストライカー)が無くなるとその本質一辺倒にならざるを得ず。
それも対策され通用しなくなった際にどうするかが、いま問われている課題でしょう。
そんな側面から、今季序盤はディアマンカ・センゴールを1トップにして、彼に当てるロングボールを重視したと思われますが……。
それはともかくとして、この日はこちらの疑似カウンターが通用しないのみにあらず。
磐田がスタイルを改め、裏へのボールを多用する事になった事で、逆にハイプレスの背後を突かれる疑似カウンターを受け続ける試合と化してしまいます。
まるで過去の自分達に襲い掛かられているようであり、そんな中での反撃を試みなければならず。
26分の藤枝、左サイドでの繋ぎで何度かパスカットに遭うも、繋ぎ直しを続けて(金子翔太が)奥を取る事に成功。
そこからの戻しを経て縦パス、ハーフレーンで受けた浅倉廉が中央へ横パスを出すと、そこにはワイドから移っていたシマブク・カズヨシが。
そしてミドルシュートを放つもGK三浦がセーブ、尚もゴールに迫るなか、浅倉が中央突破を試みた所上原に反則を受け。
これにより絶好の位置での直接FK、不利な展開だけに是非決めたい場面となりましたが、シマブクのコントロール重視の直接シュートは壁の上部に当たり実りません。
その後磐田のロングボール攻勢が火を噴き、綺麗にクリアできない藤枝ディフェンスは押し込まれ、CKを何度も献上する事にも繋がり。
34分には浮き球を収めた渡邉を後ろから倒してしまった楠本卓海が反則・警告と、こちらの面でも苦しさは相変わらずであり。
その反則によるFKから、ゴールを狙う磐田。
41分に左CKのような位置からのFKとなると、キッカー・クルークスのクロスがファーに流れた所を大外で角がボレーシュート。(中川創がブロック)
アディショナルタイムには倍井のドリブルを反則で止めた岡澤が警告を受け、これによる中央やや左寄りからのFK。
距離はあったため藤枝サイドの壁は3枚、しかも間を空けてのもので、これを見たキッカー上原はその間を通す直接シュート。
しかしその後ろで楠本がブロックと、セットプレーで仕留める事は出来ず。
数多反則を与えた藤枝サイドですが、43分には逆に、左サイドからの縦パス攻勢のなか入れ替わりで前を向いた千葉寛汰が江﨑に倒され。
すかさず浅倉が繋いでアドバンテージとなるも、その先で金子翔が為田大貴を倒してしまい、逆に反則を取られてしまうと判定に納得できない仕草を見せるピッチ上ならびにベンチ。
倒れつ倒されつつで、審判団も難しい判定の連続を強いられているようでした。
そして前半最後の場面、再び藤枝が地上で縦に速い前進を試みるも、金子翔が角に反則気味のチャージを受けロスト。
すかさず笛が鳴ったものの、これが前半終了を告げるものであったため藤枝サイドは大紛糾に至ってしまいます。
そしてベンチから浴びせた抗議により、GKコーチの阿部健作氏ならびにリザーブのGK六反勇治の2人に警告が突き出され。
序盤はこうした反則無しの判定に憤っていたのは磐田サイドだったので、因果応報の感がありました。
ともかくスコアレスで前半終了となり、この時点で藤枝の警告は5度。
構造的にどうにかしなければ厳しいという藤枝ですが、ハーフタイムでの交代は無く。(磐田も)
キックオフでの初手は、後方からロングパス→右サイドで松木フリックで、これにより磐田の自陣深い位置での左スローイン。
これを回収しての好機から右CKを得ると、キッカーのシマブクはグラウンダーでのクロスと変化を付け、走り込んだ松木のダイレクトシュートが放たれるもジャストミートせず。
絡め手で何とか1点を……という選択を取りました。
それに面食らった磐田は、後半4分敵陣でのパスミスを千葉に拾われると、金子大毅が彼の前進を反則で止めてしまい警告を受け。
とうとう磐田サイドにも被害が、という絵図でしたが、直ぐに持ち直し本来の姿である主体的な攻撃へと移り。
後半勝負の様相を見せますが、ここでも従来のポゼッションスタイルというよりは、サイドを素早く運んで奥を突きに掛かる攻め。
倍井や角の推進力が活きる戦いで、ダービーならではのハイテンションぶりがそのまま形になったでしょうか。
しかしそれにより攻守に走力が要求されるサッカーで、選手への負担が気になる所であり。
その懸念通り、9分に渡邉が足を痛めてしまい交代措置が採られマテウス・ペイショットを投入、同時に金子大→中村駿と2枚替え。
まるで2年前のJ2での戦いをトレースするような流れの磐田。
即ち遠藤保仁・針谷岳晃(現福島)のドイスボランチで開幕を迎え、パスサッカーを試みた序盤戦から変節、走力とインテンシティを重視して上位に昇り詰めるという経歴。
そして悲願の自動昇格に辿り着いた訳ですが、今季もこの所の不振を経て類似してきた感がありました。
ともかく、2人の交代により重視する走力が若干低下した磐田。
それを境に藤枝は、GK北村のロングフィードによる疑似カウンターを仕掛ける余地が生まれます。
13分にそのロングフィードが裏に送られた事で、左奥で受けた千葉のトラップ際をクリアされるも左スローインで継続と、綺麗な形にならずも敵陣でサッカーを再開できるのが強みであるこのスタイル。
続く14分にもGK北村のロングフィードのセカンドボールを拾い、今度は敵陣でのポゼッションの局面となり、シマブクがクルークスのプレスバックを切り返しでかわすといった攻防を経て好機に。
アンデルソンが左奥からカットインし、角度の無い所からシュートを狙いましたがブロック、その後のクリアが為田に当たってCKと攻勢を強め。
その後磐田が押し返したという所で、19分に藤枝ベンチも動き金子翔→大曽根広汰へと交代。
「静岡三国」全てに所属経験を持つ金子翔、こうしてダービーを彩った末にお役御免となりました。
投入された大曽根により、シマブクが左シャドーに回った藤枝ですが、これに馴染むまで時間が掛かり。
その間逆に磐田が、藤枝のプレスをロングフィードで回避して攻撃開始と、疑似カウンターの応酬という展開に。
数本仕掛けたのち、22分の磐田は今度は地上での繋ぎ、右サイドから角が為田とのワンツーで運び。
そして上原を経由し受け直し、右ハーフレーンからミドルシュートを放った角ですがゴール上へ惜しくも外れ。
直線的に運ぶ選択をする事で、益々持ち味が生きたようなこの日の角でしたが、25分に交代となり。
佐藤凌我が同ポジションで投入されると、ここから従来のポゼッションの比率が高まる磐田の攻め。
その最中の27分、GKからの繋ぎで上原のレイオフがズレてしまいCK献上というミス。
藤枝はこのCKからセットプレーで押し込む流れが生まれ、左スローインから繋ぐなかでシマブクがペイショットに反則を受け。
これにより左ワイドからのFKを得ると、キッカー・シマブクは強引に直接シュートを狙いますがGK三浦がキャッチ。
磐田のボール保持の局面が増えた事で、こうしたセットプレー頼み、ないしはカウンターの色が強まった藤枝。
33分磐田のゴールキックは短い繋ぎでのスタートから前進と、やはり完全に保持に舵を切ったような絵図。
長い繋ぎを経てクルークスのスルーパスで右ポケットを取り、中村駿のクロスをファーで松原が折り返しと、ゴール前での好機を迎えましたがシュートは撃てず。
すると藤枝がカウンターに持ち込み、裏を取った松木にロングパスが渡ると、その前進をリカルド・グラッサが倒してしまい反則・警告。
これで今度は先程より狙いやすい位置(右ハーフレーン・エリアからすぐ手前)での直接FKとなり、躊躇わずシュートを放ったキッカーのシマブク。
しかしゴール上へと外れ、待望の先制点はまだ生まれません。
38分に双方のベンチが動き、藤枝がアンデルソン→中川風希。
磐田は為田・クルークス→川口尚紀・川合徳孟へと2枚替え。
このベンチワークがどう出るかという終盤戦に突入します。
39分に最終ラインから地上で運ぶ藤枝、楠本→岡澤フリック→大曽根でプレス回避に成功し、浅倉と千葉の持ち運びで(千葉が)左ポケットを突く好機に。
そして入れられたグラウンダーでのクロスをニアで中川風が合わせるも、ミート出来ず前方へこぼれ、GKの眼前で松木が再度シュートしましたがこれはオフサイドで無効となり。
41分、今度は磐田がGK三浦ロングフィード→倍井収めから左サイドで前進、松原のクロスがニアの川合に収まりそのままシュート。
中川創がブロック、こぼれを拾った川合が奥へと切り込んで再度シュートしますが、岡澤のブロックに阻まれ。
交代選手もフィニッシュに絡んでいきますが、どうしても入らない先制点。
ATに入る直前で、藤枝は最後の交代を敢行。
久富・松木→中村涼・榎本啓吾へと2枚替えし、最後の勝負に入ります。
上記の流れから、交代選手が試合を動かす可能性が高いと踏んだでしょうが、悪い方に働いてしまうとはこの時点では予想だにせず。
こぼれ球を右サイドで拾い、奥へ切り込みマイナスのクロスと好機を生み出した榎本。
しかし藤枝の好機はこれぐらいで、逆に磐田が押し込みを掛けると、負の側面が顔を出すに至ります。
GK三浦も前に出てのキープからロングフィードと、全員で1点を狙う姿勢を見せると、右ワイドで収めた川合がカットインを経て左ポケットへパス。
受けた倍井のクロスはクリアされるも、跳ね返りを繋いで再度倍井が持った所に対峙するのは榎本。
疲労困憊にも拘らず痛烈なカットインでポケットを取った倍井に対し、後追いの形で倒してしまった榎本、たまらず反則を告げる笛が鳴り響きます。
土壇場でPK献上という痛恨の結末、かつ納得の判定であり頻繁に意義を唱える属性持ちの藤枝サイドも、この場面では頭を垂れる事しか出来ず。
キッカーの位置では、グラッサが暫く居座ったのちペイショットに託すという、その結果が勝敗に直結する事を実感させるこのPK。
そして放たれたペイショットのシュートは、GKが届かない左隅へと決まります。
ようやく入った先制点は、とてつもない重みのあるものとなりました。
藤枝のキックオフで再開するも、それを断ち切ってカウンターに持ち込んだ磐田。
敵陣まで運んでキープの体勢に入り、勝負ありというように吹かれる試合終了の笛。
際どい勝負を制しての、胸すく勝利でダービーマッチを飾った磐田。
これを機に、再びリーグにおける優位性を築き上げたい所でしょう。