<前回の記事>
- 徳島(17節・ホーム磐田戦、1-1)
- 大分(先送17節・アウェイ今治戦、1-1)
<徳島スタメン> ※()内は前節のスタメン
- J3・八戸へレンタル移籍中のターレスが、レンタル先変更という形でJ3・長野へ再度移籍。
<大分スタメン>
- 水曜に天皇杯2回戦(札幌戦、2-2・PK5-3)が挟まる。そこからの継続スタメンは無く、天笠泰輝・池田廉・宇津元伸弥・伊佐耕平が途中出場。
- キムヒョンウがいわきへレンタル移籍となり、前節(秋田戦、1-2)をもって登録抹消。
- 前節負傷交代した榊原慧悟の詳細が発表され、脳震盪との事で治癒期間は未発表。
連勝街道を走っている水戸の存在で、上位陣が混沌とした中で折り返し地点を過ぎ。
そうした状況故に、安定感のある方が有利という思想を醸し出している徳島。
しかし前半戦最後となった前節(千葉戦、3-3)は、まさかの3失点で出入りの激しい試合となり。
千葉サイドがハイプレスに舵を切ったのをまともに受けてしまった感で、これで出色の少なさであった総失点はようやく2桁を記録。(10点)
ここから、あくまで狙うのは数字では無く昇格という思考に切り替える事が出来るかが試される一戦と化しました。
キックオフを得た徳島はロングボールを選択し、その後のゴールキック(前半2分)でもGK田中颯はロングフィードと、実に慎重な入りで出方を窺い。
その対象である相手の大分も、付き合うようにロングボール主体。
しかし両者ぶつかり合った結果、それによるスローインから素早いサイド攻撃を仕掛けにいったのは大分の方。
伊佐が裏へ落とし→有馬幸太郎が走り込んでマイナスのクロスと、手数を掛けずにゴールに迫り、主導権を握りにいきます。
それを受けた徳島、最終ラインから地上で繋ぐ体勢へと切り替えますが、大分はここでもハイプレスを嵌めにいき。
徳島は悉く、サイドへハメパスを出しては詰まらされるの連続で、敵陣への進入すらままならない立ち上がりとなりました。
前節の千葉のように積極的な守備で、逃げきり体制を作られる前にスコアを動かしたいという思想が強く表れ。
そんな開始10分間の攻防で優位に立った大分。
続く11分もルーカス・バルセロスのパスミスを拾った天笠から攻撃開始と、やはりボールゲインの流れは続き。
伊佐のポストプレイを挟んで右へ展開し、池田のアーリークロスがファーに走り込む天笠に収まり、そのままシュート。(エウシーニョがブロック)
直後のコーナーキックでも、こぼれ球を繋いで池田がペナルティアークからシュート(GK田中セーブ)と、ペース通り順調にフィニッシュを重ねていきます。
前掛かりさ全開といった大分の立ち回りですが、一度剥がされると脆く。
16分再度徳島が最後方から地上で繋ぐ体勢に入ると、山越康平が山田奈央とのパス交換ののち伊佐・有馬の間を通すパス。
受けた鹿沼直生もドイスボランチの間を通すと、渡大生のレイオフを受けた児玉駿斗のスルーパスが炸裂、一気に好機を迎えたバルセロス。
エリア内右へ進入してデルランと対峙すると、追い越したエウシーニョに出すと見せかけ、内へ切り込みの末にシュート。
ブロックを無効化して放たれたフィニッシュが、綺麗に左隅へと突き刺さります。
前回観た際は度々決定機逸を披露してしまったバルセロス、この日は最初の好機をモノにする事に成功しました。
押し込む展開を、一発で変えられてしまった大分。
こうなるとボールを持たされる展開と化してしまい、自身がポゼッションで突破口を開き、堅守をこじ開けなければならず。
例によって両ウイングバックを高めに位置取らせる事に重点を置くビルドアップで、3バックは左肩上がりの状況が多め。
そしてボランチを右へスライドさせてそれを可能にするものの、肝心のWBにボールは中々渡らず。
前回観た今治戦のような、直接吉田真那斗へ当てるロングボールを送る事も殆ど無いため、宝の持ち腐れといった感が強まり。
逆に、リードした事で徳島のボール保持に余裕が生まれ。
ミラーゲームの状況では、エウシーニョと青木駿人がサイドバック化しての4バックへの可変が基本となる攻撃時。
するとマンツーマン基調の大分は、青木に池田がピン止めされる格好となり、最終ラインへのプレッシャーが薄くなる事を強いられ。
GK田中がパスワークに加わるのもあり、立ち上がりとは一転し、思うように嵌らなくなる前線守備。
大分にとって、先制点を与えた事が重くのしかかる典型的な展開に。
29分左スローインからの繋ぎで、有馬と伊佐の双方がポストワークで繋ぎに拘わり前進に成功、中央から伊佐がミドルシュート。(青木がブロック)
その他ワイド奥に開いて自らクロスを入れる伊佐など、ターゲット以外の働きで何とか好機を重ねていくも、そうなると逆に中央でのシューター不足に苛まれる事となり。
単純なクロスでは通用せず、難しい縦パス・スルーパスを送って途切れるor最終ラインに戻して作り直しという流れを強いられます。
41分、伊佐のレイオフが繋がらずに鹿沼が1タッチで繋いで徳島の逆襲となり、渡のスルーパスでがバルセロスに渡り再度決定機に。
先程と同様にエリア内右へ切り込むも、今度はデルランに反則気味に阻止されて撃てず。
すると大分のカウンター(宇津元が左奥からカットインもエウシーニョが防ぐ)と、局面が目まぐるしく動く1分間となり。
これを切欠とし43分の大分、GK濱田太郎が低いロングフィードで徳島の前線守備を突破、そのまま左サイドを素早く運びクロスに辿り着いたのはデルラン。
左肩上がりの布陣が奏功するとファーに上がったこのボールを合わせたのは吉田と、高目のWBの利点も生まれましたが、このヘディングシュートもGK田中のセーブに遭い実りません。
終盤は吉田のロングスローなど、セットプレーを駆使した攻勢に入るもゴールには辿り着けず。
1-0のまま前半終了となります。
必勝パターンに入ったような徳島ですがハーフタイムで選手交代、それも中央センターバックの山田に代えてカイケを投入。
負傷が疑われるようなカードの切り方(前半終了と同時に、山田が負傷アピールのようなサインを出していたが詳細は不明)で、堅守を保つのに余談が許されない状況となり。
大分キックオフで始まった後半ですが、ロングボールがタッチを割ってあっさり捨ててしまう形に。
これが相手の変化を突けずかつ徳島のターンを齎すという、勿体無い入りとなります。
徳島はこの左スローインの跳ね返りを拾った児玉がすかさず裏へラフにロングパス、右奥で受けて溜めを作ったバルセロスが中央へ浮き球パス。
エリア手前へ上げられたこのボールを杉本太郎がダイレクトでボレーシュート(枠外)と、最初の好機でフィニッシュに結び付け。
出遅れた大分は、その後の徳島のセットプレー攻勢を凌ぐと後半5分、最終ラインから縦パス攻勢で中央突破。
これを防ぎにいった徳島ディフェンスの立ち遅れを呼び、伊佐が鹿沼にアフターチャージを受けた事で反則、中央からの直接FKに。
好機が決して多くない中で、当然直接シュートを選択しましたが、キッカー宇津元のシュートは落ちずにゴール上へと外れモノに出来ず。
この好機が、自信では無く焦りに繋がってしまったか、前掛かりな意識はさらに自然と高まる結果に。
9分の徳島の右スローインから、またも児玉のスルーパスが炸裂して裏を取られてしまう事態となり、抜け出したのは三度バルセロス。
今度は正真正銘GKとの一対一で、前に出た濱田を見てのループシュートで仕留める事に成功します。
これだけの裏抜けを発揮すれば、高さもあるだけにスピード特化のジョアン・ヴィクトルより優先度が高まるのも納得という他無い、この日2点目を挙げたバルセロス。
これで一層苦しくなった大分。
16分に伊佐→屋敷優成へ交代したのちはターゲットに頼る攻めもし辛くなり、地道に地上でやりきるしか道は無く。
それでも、激しいデュエルを挑む徳島に対し地上でパスを振り続ける事で反則も膨らむ流れに。
20分に徳島のクリアボールを拾いにいった野嶽惇也が、腕で渡に抑え付けられる格好で反則、右ワイドからのFKに。
上がったクロスをニアでペレイラが合わせるも高く上空へ上がり、再度ペレイラが跳ぶも足下へこぼれ。
これを拾った有馬がシュートするも厚いブロックに阻まれ、どうしても堅守を崩せないという絵図に終わってしまいます。
防戦になると光る徳島サイドですが、反則の他重ねられる(吉田の)ロングスローなどによるプレッシャーからか、GK田中が判定に不服な態度(こぼれ球をキャッチするもラインアウトでCK→すかさずボールを蹴り出す)を示した事で警告を受け。
25分に徳島ベンチが再度動き、杉本と渡に代えて玄理吾とトニー・アンデルソンを投入。
一方の大分も27分、中川寛斗・宇津元→小酒井新大・薩川淳貴へと2枚替え。(池田がボランチに回る)
双方交代が交わるも展開的には大きく変わらず、大分がどう徳島守備陣を突破するか。
28分、ここも中盤からの繋ぎのなか天笠が児玉に倒されるという事態が起こるも、アドバンテージで継続し池田の左裏へのロングパスに走り込む薩川。
そのスピードで奥で追い付いてクロスに辿り着くと、GK田中の逃げるフィスティングで得たCKから、デルランがボックス内でバイシクルでシュート。(山越がブロック)
決して流れが良くないなか、強引にでもゴールを狙う意欲が良く表れた好機に。
しかし34分、右サイドを突破した小酒井が溜めを作って戻したところ、高木のアフターチャージを受けて倒れ。
ここもアドバンテージが採られましたが、フィニッシュに繋がらず終わると大分サイドのヒートアップを呼ぶ事態となり、一斉に異議を唱えるベンチメンバー。
度重なるアフターチャージに、「せめてカードを……」という思惑が窺えるような光景でしたが、裏を返せばそれだけリードされると著しく不利になるといった徳島戦。
36分に再び徳島ベンチが動き、エウシーニョ・高木→柳澤亘・高田颯也へと2枚替え。
すると合わせるように大分も38分に2枚替え。
大胆な策が欲しい所で、野嶽・デルラン→松尾勇佑・藤原優大と、左右のCBを揃って交代とそんな手を打ってきた片野坂知宏監督。(松尾は右WBに入り、吉田が右CBに)
それでも、以降徳島が攻撃権を確保し、ボールポゼッションを逃げきりのために使うお馴染みの立ち回りに。
アンデルソンの加入で高まったポストワーク・キープ能力により、大分は遮断するのも一苦労という状況に。
41分に玄のドリブルを阻んだペレイラによりカウンターに繋げ、素早いパスワークからドリブルに入った有馬を反則で阻止した柳澤に警告。
ようやくカードという被害が出された徳島でしたが、既に時間も押し迫り効果的とはならず。
天笠の縦パスを軸に前進の機運を作りますが、それだけではシュートチャンスを生み出せず。
そして徳島のブロックを前にそれ以上のものを生み出せず、池田が遠目からクロス気味のシュートを狙う(44分)など焦りは最高潮といった終盤戦。
迎えた45分、そんな相手の気勢をいなすように徳島がボール保持、児玉が持ち運びで天笠を剥がしたのちまたもスルーパスでバルセロスを走らせ。
この日定番の絵図が再度生み出されると、前に出るGK濱田がバルセロスのドリブルを阻止に入りますが、あろう事か腕でボールに触れてしまいハンドの反則に。
そして故意ないしは決定機阻止と取られたこの行為で、容赦無く突き付けられた赤いカードにより、退場処分となってしまいます。
土壇場でのGKの退場で、既に交代機会も無い大分は、その対処により反撃すらままならない状況に。
相談の結果池田がGKを務め、ムンキョンゴンのユニフォームを急遽借用してゴールマウスの前に立つ事となりました。
再開は徳島のFK、それも中央・エリアからすぐ手前と、直接狙わない手は無いという位置。
いきなり急造GKに対する試練という場面であり、その通りに直接シュートを放つアンデルソン。
コントロール重視でゴール左を襲ったこのシュートに、正面で立ち塞がりセーブするGK池田。
キャッチはしきれずCKにしてしまったものの、上出来といった所でしょうか。
しかしそんなドタバタぶりにより、既に反撃の機運は無きに等しい大分。
徳島はCKを得ても、相手GK不在の状況でとにかく撃つという思考に駆られたか、キープを選択せず尚も攻め上がります。
そして後方も前へのベクトルを強めるに至り、カイケの反則気味のアタックで奪取すると、拾った高田颯が左サイドを一気にドリブル。
奥から入れられたマイナスのクロスを、ニアで受けたバルセロスがシュート(小酒井がブロック)と、果敢に3点目を狙う立ち回りをまさかのこの時間帯で繰り広げるに至りました。
それでも時間が決定的に足りず、2-0のまま試合終了。
最後は急展開となりましたが、無事に徳島が逃げきりといった流れは全体変わらずという試合でした。
相変わらず水戸の連勝は続いており、今節とうとう首位に立ち。
しかしそれにより、千葉の失速もあり混迷ぶりに拍車が掛かる昇格戦線。
その輪に加わる形の徳島も、以降唯一無二の安定感を盾として邁進する事でしょう。