<愛媛スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 前節までは4バックだったが、この日はダービー故か相手と同一の3-3-2-2(3-1-4-2)へシフト。
- ヴィアナがブラジル・クルゼイロECからレンタルで加入し、前節(水戸戦、1-1)から登録されて即ベンチ入り。
- スカルゼが中国・山東泰山FCから完全移籍で加入し、今節から登録されて即ベンチ入り。
- 開幕直前に、GK牧口がJ1・セレッソへレンタル移籍となる。
- 来季加入内定の武藤(中京大)が特別指定選手となり、開幕節から登録される。
- ユース所属の島が2種登録選手となり(以下同文)
<今治スタメン>
- 前節(鳥栖戦、4-1)出場停止の新井がベンチに復帰。
- 梶浦の負傷が発表され、2/5に発生して2/18に手術実施。(治癒期間は未発表)
前節待望のJ2初勝利、それも元J1クラブ(鳥栖)相手に大勝と勢いを得た今治。
一方で前年からの未勝利を引き継いでしまい、その数14と膨れ上がった愛媛。
状態がどうであれ、一度決戦となれば血眼になってぶつかり合うのみ。
そんな気概が露わとなるダービーマッチ、通称「伊予決戦」。
2年前J3で行われたのを遠い昔とするべく(もちろん、当時の激戦の内容を忘れる訳にはいかない)、J2での恒例行事として定着できるかどうか。
その意気込みを采配で示したのは愛媛の方で、開幕から貫いてきた4バックのフォーメーションを放棄。
今治と同一の3-3-2-2(3-1-4-2)へと変更し、増やしたセンターバックの一角に、新人の金沢を起用と大胆な手を打ってきました。
今治への対抗心か、はたまた純粋にチーム低迷を受けての転換かは不明ですが、こうして特別な一戦に向けた舞台を整え。
同一フォーメーションなものの、3-4-2-1同士とは違い前線vs最終ラインでかみ合いのズレが発生するのでミラーゲームとはいえない対戦に。
そのため、ラフなボールの蹴り合いで始まった対戦も、それを活かすべくの保持で落ち着く時間を高めなければ消耗しっぱなしの一戦となる危惧は想像に難くなく。
先にその意思を見せたのは今治で、前半7分に近藤が左サイドを切り込むも戻して作り直しを選択。
対する愛媛サイドはハイプレスでダービー故の対抗心を露わにするも、すかさず弓場のロングパスでその背後を突きに掛かり。
再び近藤が左奥で受けてクロス(合わせにいった笹が反則で終了)と、相手を引き付けて崩すという思考のジャブを見せ。
しかし、ちょっとやそっとの事では前向き姿勢を崩さない愛媛。
直後の8分に谷岡の反則気味なアタックで奪取すると、森山が裏へ送ったミドルパスがディフェンスを掠めエリア内を突くボールに。
そして抜け出した田口がシュートに行かんとするも、GK立川を勢い余ってチャージ+オフサイドの笛と、二重の反則(取られたのはオフサイドのみ)を犯すに至ってしまい。
熱くなるのは必至なダービー、の負の側面が露わになる格好に。
試合はおおむね、球際勝負の色合いを強めながら、2トップへ当てるロングボール中心のビルドアップ。
但し今治が前述のように、プレス回避の姿勢からのロングパスという意識が高く。
対する愛媛はプレスをいなしきれないうちにロングパス、と逃げの側面が強く。
そして2トップも強力な助っ人を要しているため、このぶつかり合いでは今治有利の感は拭えません。
それをカバーしたのが、今節スタメン抜擢された金沢。
その手段は類まれなパワーと、それを活かしてのロングスローという、この日の愛媛のサッカーにピタリとマッチしたものであり。
2トップ(主に村上)に当てるロングパスで、こぼれ球を含めて何とか確保する愛媛。
クリアでスローインとなれば、多少の距離があっても金沢が放り込んで無理矢理好機に持ち込むという手法で攻撃機会を重ねます。
このパワーを守備面でも活かす金沢、キーマンのヴィニシウスに対しても、フィジカルを押し出したチェックで仕事をさせず。
難儀するヴィニシウス、それを嫌がるかのように次第に自陣にまで降りてポストワークをする状況が目立ち始めます。
それでも組み立ての面では上回る今治、21分に再び最終ラインでプレスを引き付けたのち、右ワイドから弓場が裏へのロングパスでタンキを走らせ。
クリアが小さくなった所を拾った笹が右奥からクロス、そしてタンキがヘディングシュート(枠外)と、ターゲットを存分に活かしたビルドアップの脅威を見せ付け。
アバウトさが目立つ愛媛も、徐々に最終ラインで落ち着けながら、右サイドに甲田が降りて福島を高い位置に張らせるという可変など戦術勝負の色を出し始め。
その姿勢も中々巧くいかず時間を費やしますが、33分にカウンターになりかけた所を、石浦が山田に倒されて反則。
これにカードが出なかった事で、ホーム(ニンジニアスタジアム)のスタンドが騒然となり。
ヘイトを溜めかねない場面ながら、それを上回る一体感を得れたでしょうか。
そして35分、果敢なプレッシングが奏功して敵陣で森山がボール奪取に成功。
こぼれ球を拾った田口が加藤潤に倒されるも、村上が拾った事でアドバンテージ(のちに警告)となり、すかさず右ポケットへ送られるスルーパスに走り込んだ福島がグラウンダーでクロス。
前へのベクトル全開での攻めを甲田がニアに走り込んで合わせて仕上げ、またもGK立川と交錯という絵図が生まれながらもゴールにねじ入れます。
ホームも味方に付けながら、初シュートを見事先制点に結び付けた愛媛。
これで余裕を得た愛媛は、自身も保持のシーンを膨らませ。
今治は、守備面ではヴィニシウス・タンキの助っ人2トップが仇になる感じで、2人の間を通すパスを頻発させて巧く組み立て。
39分には最終ライン⇔深澤によるそのパス交換を経て、GK辻への戻しを経て再度前進ののち金沢が裏へロングパス。
今治のお株を奪うようなロングボールを活かすビルドアップを見せましたが、ここはセカンドボールを拾った村上が左ポケットで奪われてフィニッシュには繋がらず。
押し気味ながら先に失点してしまった今治、動揺は少なからずあったでしょうか。
笹を一列下げてドイスボランチの布陣にする(それでも2トップは止めなかったため3-4-1-2か?)と、終盤にようやく落ち着いたか、再度最終ラインからの保持で活路を見出しに掛かり。
前述のように2トップの弱点が出かかったのもあり、42分にはヴィニシウスが降りてポストプレイ・タンキが左ワイドに張り出して溜めを作るという具合に囮に。
そして近藤のクロスをニアで合わせたのは加藤潤と、異なる手法でゴールを狙いましたがこのループヘッドは惜しくもゴール右へと外れ。
アディショナルタイムにも、左からのクロスに加藤潤がニアで合わせにいくシーンが生まれましたが(競り合いでこぼれ)、ゴールには届かず。
1-0のまま前半終了となりました。
終盤に布陣を弄ったためか、ハーフタイムで今治は笹に代えて本職ボランチの新井を投入。
微調整の繰り返しといった采配で後半に臨みます。
迎えた後半。
戦術の調整という側面はありましたが、メインはやはりダービーに相応しい、頻発するデュエルによる球際勝負。
好機より先に、後半2分に空中戦で村上が大森の腕を受けて倒れるシーンが目立つ入りとなりました。
結局は前半と変わり無く、という状況になれば、前半終盤良い流れに持ち込んでいた今治に針が傾き。
3分またも最終ラインから、地上での前進のなか右ワイドにタンキ・ヴィニシウスが張り出して溜めを作るというその攻撃を貫き。
そして戻しからのパスワークで逆サイドへ展開し、加藤徹とのパス交換を経ての近藤のクロスにニアで合わせにいく加藤潤と、全く同じ絵図を披露。
見事に奏功し、加藤潤がフリックした(意図的かは不明)奥で跳び込んだヴィニシウスがヘディングシュートを放ち、ゴール右へ突き刺します。
本命は2トップながら、それを補強したのはサイドという点は見逃せず。
組織力の強化が果たされた今治。
3-4-1-2の布陣は継続されましたが、守備時は無理に5-3-2のブロックとはならず、加藤潤が左に張り出して5-2-3に近い形に。
積極性を見せなければならないダービー故に、やや歪ながらも理に適っているようでした。
押し返したい愛媛、基本に立ち返りロングボールの供給により敵陣へと運び。
そして5~9分の間に金沢のロングスローという局面は4本(そのうちフェイントで短く入れたのが2本)と、肉弾戦の色を強めて対抗します。
それでもロングスロー・ラフなクロスからは運が良くなければ(orターゲットが競り勝てなければ)フィニッシュは生まれないもので、未だ得点の場面の1本のみ。
逆に今治は同点弾を切欠に、羽を伸ばすかのように攻め上がり。
12分、再びプレッシャーを呼び込んでGK立川のロングフィードからの攻めと、こちらも前半立ち上がりの手法を取り入れ。
タンキ狙いのボールで、セカンドボールを拾うと右からの攻めへと切り替え、弓場が奥では無く中央へと切り込み。
そして託された新井がミドルシュート(GK辻キャッチ)と、攻め手を広げに掛かり。
15分に決定機が訪れ、新井のボールカットから1タッチでの繋ぎで敵陣で確保に成功し、右から弓場のクロスに持ち込み。
この中央に上がったボールを加藤潤が合わせヘディングシュート、GK辻がセーブするも左ポケットへのこぼれ球を近藤が折り返し。
そしてヴィニシウスの足下に転がり、混戦のなか撃ちにいきましたがGK辻が前に出て防ぎ勝ち越しならず。
相手との肉弾戦も、シュートの局面での発生ならば「やるかやられるか」という印象が強まる事で好感触であり。(個人の見解です)
ここで愛媛ベンチは動き、田口→細谷へと交代。
FWを削ってボランチを入れる采配の通り、3-4-2-1へとシフトします。
ドイスボランチにする事で、今治のシステム変更によるミスマッチ感を正しに掛かったでしょうか。(といっても今治は未だ2トップ色が強いですが)
それでも、こちらから仕掛けるのはアバウトな攻撃主体なのは変わらず。
17分に裏へのロングパスに抜け出さんとした村上を大森が倒してしまい反則・警告。
得たフリーキックは中盤からの位置でしたが放り込みを選択(キッカーは石浦)し、金沢のスローインと悪魔合体するかのようにその体制を色濃くし。
一方今治も20分にベンチが動き、加藤潤→持井へと交代。
第3のターゲットとなっていた加藤潤が退いた事で、地上で攻めるという意思を強めに掛かったか。
早速の21分その持井にチャンスが訪れ、一度は加藤徹の縦パスを収められず奪われるも、すかさず自ら奪い返した持井。
そのままミドルシュートを放ちましたが山原のブロックに阻まれ。
しかしミラーゲームの色が強まった事で、愛媛にも勝つチャンスが生まれたか。
それを活かすように、23分甲田が敵陣でボール奪取してすかさずショートカウンター、深澤のスルーパスが左ポケットへ。
走り込んだのは石浦で、最奥でクロスに辿り着いたものの市原がブロック、コーナーキックを得たものの石浦は痛んで倒れ込み。
無理な体勢でクロスを上げたのが拙かったらしく、何とか継続するもその痛がり具合からとてもキッカーを務められる状況では無くなります。
しかしこの左CK、代わりに上げた深澤のクロスから、ファーで放たれた山原のヘディングシュート。
これがゴールネットを揺らし、2本目のシュートで2点目とまさかの展開を演出するに至りました。
再び前に出た愛媛ですが、直後再度倒れ込んだ石浦が交代となり。
2枚替えを選択し、石浦・村上→鶴野・ヴィアナへと交代。
同時に今治も、弓場→梅木へ交代します。
これが初出場となったヴィアナですが、典型的な「守備面で使い辛い助っ人FW」の域を出ないという印象。
ボールホルダーにプレッシャーを掛けるだけとなり、この日の愛媛のハイプレスから勢いを奪わせる要因となってしまいます。
それを突くように、最終ラインでのパスワークで組み立てる今治。
29分にはそこから市原のロングパスで一気に右奥を突くと、走り込んだ梅木のマイナスのクロスをエリア外で持井が合わせシュート。
ゴール右へ外れたものの、ここから展開は今治の一方的なものへと変貌するに至り。
労せずファーストディフェンスを外し、敵陣に進入を続ける今治という絵図に。
それでもゴール前で必死に凌ぎ続ける愛媛。
36分、ハイボールの競り合いでタンキが金沢と交錯して倒れ込み、未だ金沢のパワーは健在。
そんな事を考えていた刹那、GK辻のフィード(ミスキック気味)が高く上がると突然タンキが起き上がってそれを拾い。
プレーが止まると思っていた愛媛サイドの隙を突くように攻めを継続する今治、右奥からのタンキのクロスは防ぐも右CKで継続となり。
そしてキッカー新井のクロスの跳ね返りを、近藤が狙いすましてボレーシュートで合わせ。
ブロックでコースが変わったのもあり、GK辻の逆を突いてゴールネットを揺らします。
マリーシアも絡め、再び追い付いた今治。
これで攻める余力は既に残っていない、というような愛媛は窮地に。(2-1になってから攻撃機会は2度のみ)
フィジカルを発揮する金沢も、その後ヴィニシウスにも危険なチャージを犯す(38分、こぼれ球をそのまま空中で繋げてエリア内に)など危なさが色濃くなり。
それらを踏まえ、40分に最後のカードを切った石丸清隆監督。
金沢・甲田→スカルゼ・ダンカンへと2枚替え、先日獲得したばかりの助っ人も併せて3人が揃い踏みとなります。
しかし今治はここでも狡猾ぶりを発揮、ドロップボールでの再開を利用してすかさず新井がクロスという手法。(ヴィニシウス落とし→近藤も撃てず)
そして42分、再度今治の地上での前進vs愛媛のプレスという局面を迎えると、右への展開ののち梅木が森山を剥がしドリブルに持ち込んでの完全勝利。
新井のスルーパスで奥へ走り込んだ梅木からのクロスを、ヴィニシウスがヘディングシュート。
文字通り激闘にケリを付けるフィニッシュで、ゴールに突き刺します。
多少の苦難はあっても、主役はヴィニシウスという事を再確認する勝ち越し弾ともなり得ました。
キックオフ前に今治も最後のカードを使い、山田・タンキ→藤岡・日野へと2枚替え。
持井がボランチに降り、藤岡が下がり目でハッキリとした3-4-2-1にシフトしたでしょうか。
ビハインドとなった事で、シュート2本のみという現実に襲われる愛媛はもはや取れる手段も少なく、ヴィアナを前線に上げて3人の助っ人によるパワープレイの体制に入り。
しかし付け焼刃の感しか無く、目安5分のATも無駄に時間を浪費するばかりに。
終盤にようやく、その3人では無く鶴野の落としからという逆説で好機が生まれ、右から福島のクロスがブロックされCKに。
GK辻も前線に上がり、10人がボックス内という大人数で勝負を賭けたものの実る事は無く。
最後は二次攻撃での、森山のクロスがGK立川にキャッチされて万事休すとなりました。
2-3で試合終了となり、J2初の伊予決戦を制したのは今治。
現状の成績でも愛媛に大きく差を付ける勝利となりましたが、愛媛がそうであるように維持の方が大変なのが上位カテゴリであり。
それでも上昇のターンが続く限りは高い位置となった方が有利なのは言うまでも無く、今治の「本当のスタートライン」は何処になるでしょうか。