<前回の記事>
- 甲府(26節・ホーム大分戦、2-0)
- 鳥栖(25節・アウェイ愛媛戦、1-0)
<甲府スタメン>※()内は前節のスタメン
- エドゥアルド・マンシャが累積警告により出場停止。
- 村上千歩がJ3・長野へレンタル移籍となり、27節(札幌戦、1-2)をもって登録抹消。
- 27節で負傷交代したミカエル・ドカは以降ベンチ外に。

<鳥栖スタメン>
- 前節(山形戦、2-3)は櫻井辰徳をアンカーとした3-3-2-2(3-1-4-2)で、再度3-4-2-1へシフト。
- 堀米勇輝が愛媛へレンタル移籍となり、27節(水戸戦、2-2)をもって登録抹消。
- 今津佑太の負傷が発表され、8/13に発生して全治約4週間との事で、今節復帰・ベンチ入り。
- 安藤寿岐の負傷が発表され、7/10に発生して全治約12週間との事。
- ユース所属の池田季礼が2種登録となり、前節から登録され即ベンチ入りを果たす。(今節はベンチ外)

自身前回の勝利を観てから、その後未勝利が続いているチーム同士の対戦。
そのため、特に甲府の方は昇格争いの瀬戸際という所まで後退を余儀なくされており。
一方の鳥栖は、首位・水戸相手に魂のこもったゲームで喰らい付き。
後半アディショナルタイムでの同点ゴールで引き分けに持ち込み、これを上昇機運としたかった所ですが前節痛恨の敗戦。
前向きな意識の逆を突かれるかのような前半での3失点は、劇的弾を齎した酒井宣福をスタメン起用という采配面でも表れてしまったかのようでした。
その部分だけを修正し、水戸戦のスタメンに改めての一戦となり。
主導権の握り合いという入りの時間を、ボールゲインからのショートカウンターで制する鳥栖。
特に前半5分長澤シヴァタファリが小林岩魚からボール奪取、そのまま西川潤→山田寛人と繋いで最短距離を進んだ末にエリア内から(山田が)シュート、ゴール左へ外れてモノに出来ずというシーンが白眉でした。
こうしてボール保持の権利を得た鳥栖ですが、その狙いは疑似カウンター。
最終ライン~ボランチの人数を厚くして、細かいパスワークにより甲府を前に引き込んだのち、1トップならびに前に位置取るウイングバックへ良い形でロングボールを届ける立ち回りを見せ。
しかしその意図では好機を生み出せずと、逸らされた形となります。
逆に前半9分、山田のレイオフを遮断した甲府がすかさず熊倉弘達のロングパスで裏を取り、内藤大和が右奥を突いてクロス。(合わず)
相手の狙いと似た形での好機により、勢いを削ぐ事に成功したでしょうか。
今度は逆に甲府の保持のターンになり、ハイプレスを掛けた鳥栖でしたが、甲府のボランチが最終ラインに降りる「ミシャ式」の根底の形によりズレを生み出し。
10分に中央でのパスワークからの展開で、右に開いた井上樹に対し新井晴樹が出ざるを得なくなる鳥栖、このズレから前進の余地が生まれます。
そしてフリーで受けた熊倉の中央への縦パスから、内藤のポストワークを経てソアレス→鳥海芳樹と繋いでエリア内を突く事に成功、そして放たれる鳥海のシュート。
ゴール左へと突き刺さり、綺麗に出来上がったシステムの差異による先制点に辿り着くに至りました。
この早期の失点により、難しい展開を余儀なくされる鳥栖。
それでもボール保持同士の勝負では上回りを見せ、14分にGK泉森涼太から左へ展開、細かいパスの連続で間を通しながらプレス回避し逆サイドへ。
そして右奥を窺う状況でもパスワークを続け、最後は長澤が奥へ切り込んでのクロスが、ゴール上部を襲う軌道となる(GK河田晃兵がコーナーに逃げる)あわやの一幕に。
するとこの右CKで、キッカー西澤健太はグラウンダーでマイナスのクロスと変化を付けるも、西川潤はトラップが大きくなり撃てずに終わります。
追い掛ける状況故に、前に人数を掛ける事が求められる鳥栖はビルドアップを微調整。
ドイスボランチの立ち位置を改め、櫻井がアンカーとして単独で2列目に位置取り、片割れの松本凪生は右へと張り出し。
これによりシャドーが全体左寄りとなる事で、2シャドー・ドイスボランチがダイヤモンド型を形成するというややイレギュラーな配置が、以降の前進の導線となります。
相変わらず最前線に位置する両WBにより、WBをピン止めされた甲府はハイプレスを掛ける際でも、前線5人のみで行わざるを得ず。
それにより空いたサイドを松本・西澤が悠々と突く、というシステムの噛み合わせで、敵陣で延々とサッカーを展開する下地を形成するに至りました。
それでも基本は手数の少ない鳥栖、ボールは握るもののフィニッシュは遠い……という危惧も膨らむ展開。
飲水タイムが明けた直後はまさにそうした状況で、甲府も4バック化しての慎重なボール保持により、好機が生まれない時間が続く事に。
そして疑似カウンターをお互い狙うも、ケアされボール権の交代→疑似カウンター狙い……の繰り返しに。
均衡を破ったのは鳥栖の方で28分、バックパスでハイプレスを呼び込み、その間を通すパスとポゼッションスタイルの鏡のような前進で右サイドを突破成功。
松本のエリア内へのスルーパスこそ(山田が撃つ直前で井上樹が)防いだ甲府ですが、まだボックス内へこぼれるボールをすかさず長澤が繋ぎ、中央で西澤がシュートと決定機。(孫大河がブロック)
これで甲府サイドも目覚めたか、直後の29分最後方での保持でプレスを呼び込んだ末に、孫ロングパス→セカンドボール確保により前進成功。
そして鳥海のスルーパスで背後を急襲するも、抜け出した熊倉の前でGK泉森が判断良く飛び出してクリア。
続く30分には今度は鳥栖が、これまで同様に長いパスワークを経て左から新井がクロス、ファーでの(山田の)折り返しを経て長澤がシュートしますがミートしきれず上へと逸れ。
一進一退という絵図になってきましたが、ここから35分辺りまで再び沈黙。
お互いハイプレスが嵌らない事により、特に甲府サイドが自陣で固める状況が長くなり、それにより慎重な立ち回りを繰り広げざるを得ないという展開に。
その他鳥栖の保持時の特徴としては、3バックの距離感がやたらと短い事。
思い起こされるのが2年前にJ2に居た群馬・大槻毅監督時代のビルドアップで、とにかくボールを大事にするその姿勢により、戦力差という弱点を覆い隠して昇格争いを繰り広げた当時。
- ↓それが顕著だった試合
しかしその時も全体得点力不足に陥っていた群馬、それを改める手段は持ち合わせておらず、機運が失われた翌年はJ3降格へのレールから脱せずとなってしまいました。
この日は、以前観た今季の鳥栖の試合よりもさらに顕著で、この所の不振を経て微調整を重ねた結果だったでしょうか。
それでも当時の群馬の二の足を踏まないためには、得点で示す他無く。
ボールを握りながらもそうした苦心が滲み出ている(と思われる)相手に対し、甲府は41分に再び、先制点のような「井上樹に新井が付く」状況を生み出して好機に持ち込み。
ここは敵陣で長いポゼッションを繰り広げるも撃てずに終わりますが、続く42分にそれが効いたか、ヴァウ・ソアレスのロングパス一本でシュートチャンスを迎えた熊倉。
しかし放たれたシュートは枠外に終わり、追加点で試合を楽にする事はできません。
結局1-0のまま前半が終了。
鳥栖は多くの時間で攻撃権を支配していたものの、肝心のゴールは無し。
しかしその展開はシステム上で齎されたものであり、無失点の甲府もひたすら押され続ける状況を良しとする訳にもいかず。
双方難しいハーフタイムと化した結果、動いたのは鳥栖の方で山田→新川志音へと交代。
1トップ同士の交代なのでシステム上はそれほど変わらず、迎えた後半開始。
その早々の後半1分に、右からの前進の末に長澤が上げたクロスを、ファーで合わせヘディングシュートに持ち込んだ新川。(枠外)
若年ながらその得点感覚で、状況打開を図りにいった狙いが早速表れ。
しかし続く2分と3分に、甲府は西澤から立て続けにボールゲインに成功しその前進を阻み。
そして前者は田中雄大が、後者は小林がミドルシュートとそれぞれフィニッシュに繋げ、HTでの微調整(西澤に激しく寄せる事でビルドアップを封じる・個人の推測です)の成果を表すに至り。
そんな対策を受けても、鳥栖の方が一枚上手で、すかさずの4分に櫻井縦パス→新井で西澤を飛ばしての左サイドでの前進。
これにより再度攻撃権の支配に成功すると、6分に得た右CKから、ショートコーナーを挟み入れられた西川のクロスをファーサイド奥で木本恭生がヘディングシュート。
GK河田が身体でセーブするも、折角の対策も上回られる事で決壊は免れない流れになってきました。
その後も幾度も新井に繋がれ、左サイドを脅かされる状況が続き。
前半はそんな鳥栖に対し、「プレスが機能しないのならばこちらも保持で対抗」という気概が見て取れたものの、後半はそれが無くなったのが致命的に。
何とか相手の攻めを切っても、(ゴールキック中心に)ロングボールを送るのみに終わり、その結果一息つく暇も得られず攻められ続けます。
そして12分、ここも新井が奥を突いてクロスを上げ、クリアされるも尚も繋ぎ再度左サイドで前進姿勢。
西澤・西川も加わり人数を掛けてのパスワークのなか、スルーパスに走り込みクロスを入れたのは西川で、このファーに上がったボールを松本が合わせきってヘディングシュート。
ゴール右へと突き刺さり、前線に人数を掛けた報酬というようなボランチのフィニッシュで同点に追い付きました。
これで著しく不利な立場へ追い込まれる格好となった甲府。
後半の好機はいずれもカウンター(ショート・ロング問わず)であり、主体的な攻めが求められる中でどうするか。
それでも14分の失点後初の好機はまたもカウンター(ヘナト・アウグストのパスカットから、フィニッシュには繋がらず)と、大きく変える訳にいかずという苦悩が垣間見えます。
それでも17分、今度は最終ラインでの前進のなか、田中が井上太聖を剥がして持ち運ぶ所で松本に反則を受け。
これで途切れると双方選手交代が絡み、甲府は井上樹・ソアレス→土屋巧・佐藤和弘へと2枚替え。
鳥栖は櫻井→ヴィキンタス・スリヴカへと交代します。
これで鳥栖は前節の開始時と同じ3-3-2-2(3-1-4-2)としたようですが、まずは甲府のFKで再開。
浅めながらも放り込む体勢を取りましたが、キッカー佐藤和はショートパスを選択、深さを取ってからの(小林の)クロス。
これは実らずに終わるも、跳ね返りを確保した甲府は最後方から攻め直しに入り。
すると相手のエラーを呼び込み、GK河田の右へのロングフィードに走り込んだ熊倉が蓋をされ、途切れると思われた所で新井がパスミス。
GKへの戻しが小さくなると、走り込んだ熊倉がすかさず入れた低いクロスをファーに走り込んだ内藤が合わせきりゴールに突き刺します。
攻撃の導線が少ない中での執念のゴールという格好で、貴重といえる勝ち越し点が齎されました。
しかし同時に、熊倉が脚を攣らせてしまい続行不可能となり。
担架で運ばれた結果数的不利でキックオフと、その代償は大きかった……と言いたくなる状況に。
交代により右(シャドー)に移った西澤を絡めての前進を、何とかCKに逃げて凌いだ甲府、すかさず小出悠太を投入します。
何とか穴を埋めたものの、ここから鳥栖の怒涛の攻勢が幕を開ける事に。
投入したスリヴカはFWでは無く左シャドーで、西川・新川の2トップとなり。
それによるハイプレスで保持が一層ままならなくなった甲府は、2点目以降一切攻撃機会を得れずと、ハッキリと専守の状態に追い込まれてしまいます。
必死に中央を固め、それでも鳥栖の間を通すパスに晒される状態は変えられずも、何とかフィニッシュは許さずにやり過ごし。
同ポジションで投入された小出に対し「クロスを入れさせるな」という大塚真司監督の指示が大声で飛んだのもあり、以降鳥栖は奥へ切り込む事無く手前からのクロスを強いられるなど、1点を守りきる勝ち筋を保ちに掛かります。
何とかこじ開けたい鳥栖は、27分に再度ベンチが動き木本・長澤→今津・楢原慶輝へと2枚替え。
古巣対戦となった今津がピッチ内に入るや、ひとしきりブーイングを浴びせる甲府サポーターですが、試合絵図を変えるには至りません。
膨らんで来た鳥栖の手前からのクロスを、ファーで折り返しという好機が続き、ゴール前を脅かされ続け。
それでもフィニッシュを放つ事が出来ない鳥栖、33分に松本→西矢健人へと交代してカードを使いきります。
ひたすら押し込む流れを作りながらも、結果のみが齎されない状況で、ベンチも執念を押し出すしかないというような采配。
そんな思いの表れか、直後に西澤のヘッドが前線に渡り、楢原が右奥へ切り込んでのクロス。
この跳ね返りが小さくなり、右ポケットで新川が拾う好機となりましたが、すかさず放たれたシュートは枠を捉えられず。
ひたすら凌いできた甲府ですが、37分にこちらも最後の交代。
ヘナトがアクシデントを匂わせるような退き方(実際痛めたかどうかは窺えず)となり、最終ラインの微調整を強いられます。(荒木翔と交代、同時に田中→マテウス・レイリアへと交代)
投入された荒木が右WBに入り、小出が右センターバック・土屋が左CBへそれぞれ回り。
レイリア投入で前への意識も出てきたか、39分にプレスにより佐藤和がパスカットに成功してのショートカウンター。
荒木のパスで右ポケットを取り、鳥海の奥からのグラウンダーのクロスをレイリアがニアで合わせますが、ゴール右へと逸れてモノに出来ません。
これにより、「鳥栖の攻め疲れを狙って追加点を……」といった展開もチラつきましたが、根本的な問題は依然変わっていなかったのが運の尽きとなり。
即ちハイプレスは無効化され、リトリートしても間を通すパスで窮地に陥るという状態。
ここまでは中央の堅さにより決定機は許さずにいましたが、41分ついにそれが悪魔合体してしまいます。
井上太に対しプレッシャーを掛けるもパスワークで剥がされ、西澤の持ち運びで敵陣に入った鳥栖、そして中央でのキープを経て狭い所を縦パスで通した小川大空。
受けた新川がすかさず送ったエリア内へのスルーパスで出来上がったGKとの一対一、西川が1トラップでGK河田をかわした末にゴールへとボールを転がします。
終始間を通す姿勢を崩さずという、愚直ともいえるような攻めをようやくスコアに繋げました。
落胆ぶりは隠せない、という流れの甲府ですが、それでも勝ち点3のためには巻き直すしかなく。
しかし残り時間も少ない以上、ここから攻めの導線を再構築するのは至難の業なのは確かであり。
守勢を変えられないなかで、手っ取り早いのがカウンター。
44分に左から攻める鳥栖に対し、スリヴカ→新井へのパスをカットした事でその好機が訪れ、荒木がボールキープで密集を打破して中央のレイリアに繋げ。
そしてレイリア・小林の2人でドリブルとスルーパスの応酬というカウンターの絵図になりましたが、エリア内へのパスが遮断されると今度は鳥栖のカウンターに。
楢原→今津→スリヴカと繋いでの脱出を経て、裏へ送られたロングパスが繋がるとエリア内右角で持ったのは新川。
そしてカットインの姿勢からシュートが放たれるも、GK河田の正面で防がれ。
直後の45分にも新井のミドルシュートが炸裂する(ゴール右へ外れる)など、相手の矢玉が止まらない状態で3点目を狙いにいかなければならないアディショナルタイムとなり。
その難度が示すように、最後は屈してしまいます。
何とか好機に繋げたものの防がれると、ゲーゲンプレスをパスワークでいなした鳥栖は敵陣で長いポゼッションに突入。
時間が押し迫るなかで鳥栖サイドも手前からのクロスの連発と、アバウトさに舵が振れますがクリアボールを確保して二次攻撃の連続と手が緩む事は無く。
そして西澤が上げた右からのクロスを、中央で合わせたのは新川。
そのヘディングシュートがゴールネットを揺らし、最後は期待の若武者により決着というこの上無い逆転弾となりました。
とうとう完全決壊してしまった甲府。
その後は孫を前線に上げる、パワープレイ紛いの布陣に全てを掛ける他無く。
しかし好機が齎される事は無く、逆に鳥栖がスリヴカのボールキープにより右奥へ運ぶ事に成功。
そしてCKに持ち込み、キープの体勢に入った所で試合終了の笛が鳴り響きました。
水戸戦に続く劇的展開ながらも、ここ3試合は鳥栖らしからぬ出入りの激しいスコアに終始。
安定感を失ったようなその状態は今後が不透明ながら、既にシーズンも終盤故に走り続けた方が良いのも確かであり。
この賭けともいえる姿勢が、実る日は訪れるかどうか。